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JVIAとは

第12回 熱交換換気の省エネと節約効果

はじめに

シックハウス問題が起こった背景の一つは、地球環境問題を契機として建物の省エネ化が強く進められたことにあります。すなわち、省エネ化を図るために、建物の高断熱化(同時に高気密化)が急速に進められ、一方で揮発性の化学物質(通称VOC)を放散させる多くの建材や施工材が使われるようになりました。その結果、室内の空気環境の劣悪化を招いて、これまでの建物では想定されなかった「シックハウス」と称される深刻な健康問題を生じさせることになりました。そのために国土交通省は、2003年(平成15年)に「シックハウス新法」と称される建築基準法の改正を行いました。

知っての通り、「シックハウス新法」の骨子は、
@ 防蟻剤として使用されていたクロルピリホスの全面禁止、
A ホルムアルデヒドを含む建材の使用の規制、
そしてB 24時間換気の義務化
の三つの柱からなっています。この中で@のクロルピリホスの使用禁止はほぼ遵守されています。つぎにAのホルムアルデヒドを含む建材に関しては、現在大部分がF☆☆☆☆の建材が使われていることから、ホルムアルデヒドが厚生労働省の指針値を超える事例はかなり少なくなっております。そしてBの換気の義務化に関しては、すべての建物で換気設備による24時間換気が行われており、快適な室内の空気環境を実現する上で大きな役割を果たしています。
室内換気は、VOC対策に極めて重要であり、とくにVOCが指針値をオーバーした場合には、ベイクアウト法(室内の温度を30〜35℃に上げて強制的にVOCを放散させる方法)とともに貴重な役割を担っています。ただ残念ながら、室内の換気はVOC対策に極めて重要であるにもかかわらず、これまでVOCと換気との関わりを分かり易すく解説したものは少なく、そのためにいまだに両者の関係は曖昧模糊となっていることは否めません。このようなことから、ここでは、「室内のVOCと換気との関わり」と題して、以下の事項に基づいて解説していきます。

  1. 最近の室内のVOCの現状
  2. 指針値をオーバーした場合のVOC対策
  3. 室内のVOCと換気との関わり

1.最近の室内のVOCの現状

 

図1 平成24年〜29年の5年間VOCの分析結果のまとめ

 

図1は、NPO法人日本VOC測定協会が行なった最近5年間(2012年4月〜2017年4月)における8種類のVOCに関して、約350件の測定分析結果をまとめて示したものです。この測定分析結果から、次のことが分かります。

(1) 厚生労働省が出しているVOCの指針値の中で、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、およびトルエンの3物質を除いた他のVOCは、指針値をオーバーする事例はほとんどない。
(2) トルエンにおいては、シックハウス新法の施行後の2〜3年間では、指針値をオーバーする事例は15〜20%とかなり高かったが、最近5年間での指針値をオーバーする事例は2.7%程度とかなり低くなってきている。
(3) ホルムアルデヒドに関しては、シックハウス新法が施行後の2〜3年間で指針値をオーバーする件数は1〜2%程度とかなり少なかった。しかしその後、指針値をオーバーする件数が徐々に増え始め、最近5年間では図1に示すように8%とかなり高いものとなっている。シックハウス新法の施行後の2〜3年間は、ホルムアルデヒドを含む建材・施工剤の使用に当っては、細心の注意が払われていた。しかしその後ホルムアルデヒドが指針値をオーバーすることはほぼないとの考えが業界で定着化し、そのためにホルムアルデヒドを含む接着剤や施工材の使用に当っての注意が緩慢になってきた事が指針値をオーバーさせる要因であると考えられる。

(4) アセトアルデヒドに関しては、指針値をオーバーする件数は13%とかなり高い。シックハウス新法では、ホルムアルデヒドを含む建材の使用の制限とクロルピリホス添加した建築材料の使用の禁止がされているが、アセトアルデヒドを含めた他のVOCを含む建材・施工材の使用に際しての法的な制限や禁止はされていない。そのために、住宅の供給者もアセトアルデヒドに対して如何なる対策を施せば良いのか苦慮しているのが実情である。 

2.指針値をオーバーした場合のVOC対策


 図2 指針値を超えたアセトアルデヒド濃度の経時変化

室内のVOC濃度が指針値をオーバーした場合の対策は、建材等から自然に放散されるVOCを換気設備による強制換気によって室外へ排出する方法と、室内の温度を30〜35℃程度に上げ、建材等のVOCを強制的に放散させる方法との二つがあります。前者を機械換気方式、後者をベイクアウト方式と呼ばれています。現状では室内のVOCを軽減させる方法としては、大多数が前者の強制機械換気方式で行われ、ベイクアウト方式は大幅に指針値を超えた時以外はほとんど行われないなのが実情です。以下、機械換気方式によるVOCの軽減効果について紹介します。

図2は新築時でのアセトアルデヒドの濃度が0.105ppmと、指針値(0.03ppm)の3.5倍とかなり高かった場合における、その濃度の経時変化を示したものです。この場合、ベイクアウトは行なわず、換気回数0.5回/hを有する排気型セントラル換気システム(第3種換気システム)を、常時稼働させた場合でのアセトアルデヒド濃度の経時変化を示したものです。約4ヶ月後において、アセトアルデヒドは、完全に指針値をクリアしている事が分かります。これまでの測定事例から、例え室内のVOC濃度が指針値の3〜4倍とかなりオーバーした場合でも、シックハウス新法で規定されているところの換気回数0.5回/hで換気を行うことによって、大部分のVOCは、4〜6ヶ月程度で指針値以下となることが立証されています。さらにはVOCの濃度が指針値の1.2〜1.5倍と比較的小さい場合には(指針値をオーバーする事例の多くは1.5倍以下である)、換気回数0.5回/hの換気設備を稼働させることで、1〜2ヶ月程度の期間で指針値以下になることが分かって来ています。

3.室内のVOCと換気との関わり

3.1 換気の有無による室内VOC濃度


図3 換気システムをON−OFFした時のホルムアルデヒド濃度

シックハウス新法においては、換気回数0.5回/hが確保される機械換気の設置が義務付けされています。本節では、換気システムの稼動の有無によって、室内VOCがどのような様相を呈するものであるかを紹介します。図3は、新築時でホルムアルデヒドが指針値をオーバーした住宅において、換気回数0.45回/hを有する換気システムをON-OFFした場合のホルムアルデヒド濃度の変化を示したものです。換気システムをOFFにした時には、ホルムアルデヒド濃度が指針値をオーバーしています。しかし換気システムをONにするとと、ホルムアルデヒド濃度は減少し、指針値以下の値となります。このように、換気しシステムは、室内VOC濃度の低減化に対して、極めて重要な役割を果たしていることが分かります。


図4 換気システムの稼動の有無による室内VOCの濃度の変化

図4は、同じく換気システムの稼動の有無によるトルエンを始めとする8種類の室内のVOCの濃度の測定結果を示したものです。換気回数0回/hの時には、ホルムアルデヒドが0.054ppmであったものが、換気回数0.54回/hの時には約1/4となる0.02ppmまでに減少し、指針値の1/4程度となっていることが分かります。またトルエンは、換気回数0回/hの時には、指針値の約1.71倍と極めて高いものとなっていましたが、換気回数0.54回/hとすると約1/5まで減少し、指針値の約0.4倍程度になっています。さらにアセトアルデヒドも換気回数0回/hの時には、指針値をオーバーしていますが、換気回数を0.54回/hとしたには、指針値の約50%近くも減少しています。このように換気システムは、室内VOC濃度の軽減化に対して、極めて有効であることが分かります。

3.2 換気回数と室内VOC濃度

 シックハウス新法では、室内の換気回数に関しては、以下に示すように規定されています。
(1) 一般住宅においては,換気回数0.5回/h以上の能力を有する機械換気設備を設けるものとする.
(2) 冬季においては気密レベル2cm2/m2以下の住宅では換気回数0.4回/h,気密レベル2cm2/m2を超える住宅では、換気回数0.3回/hなる運転用スイッチを加えて設けることができる。



図5 換気回数の相違によるホルムアルデヒド濃度の変化

図5はA〜Dの新築住宅4棟において、換気回数を3通りに変化させた場合のホルムアルデヒドの濃度を調べたものです。調査対象としたいずれの住宅においても、換気システムを停止と、換気回数が0.3回/h程度の場合には、ホルムアルデヒドの濃度は、指針値を超えますが、0.5回/h前後の換気を行うと指針値を下回ることが分かります。
このように、0.5回/hという換気回数は、VOC濃度の低減化に対して極めて有効であることが分かります。

3.3 化学物質過敏症患者に対する換気回数
図6は、入居後シックハウス症候群と診断され、その後化学物質過敏症と再度診断された患者の新築住宅のVOC濃度を示したものです。
測定された6物質のうち、アセトアルデヒドが指針値を大きくオーバーし、指針値の約3.4倍となるかなり高いものとなっています。また換気回数は0.27回/hで、かつ換気経路はショートサーキットをしており、計画換気とは程遠いものとなっていました。患者はかなりの重症者でしたので、VOC濃度をできるだけ短期間で低減させるために、換気回数が最大で1.46回/hとなる換気システムに改良・改修しました。

換気システム改修1ヶ月後、再度VOCを測定したところ、アセトアルデヒドは約1/8に減少し、指針値の半分以下となっていました。しかし、換気回数を1.46回/hと大幅にアップさせることで、他のVOCの濃度も指針値の約1/6〜1/2に減少したのにもかかわらず、患者の体調は一向に改善されませんでした。
このように、いちど化学物質過敏症を発症した患者におかれては、それが発症しないVOCのレベルは、一体どの程度のものなのかについては個人差があり、現在のところ残念ながら定かではありません。言えることは、本患者のように不幸にもシックハウスからシックハウス症候群へ、そしてさらに進んで化学物質過敏症へと移行すると、その回復には指針値の1/10以下と極めて低レベルのVOC濃度の居住環境と、かなりの時間が必要とすると言われています。
住宅に入居する際には、VOCと換気設備の換気量の測定が強く求められます。とくに、日常の生活においてアレルギー症状や化学物質に過敏の方においては、新築、或いはリフォーム時でのこれらの二つの調査は必要不可欠であると言えます。



図6 化学物質過敏症患者と換気回数

3.4 厚生労働省の指針値以外のVOCによるシックハウスの事例

北海道のある小学校において、新校舎が2006年11月末に完成し、1ヵ月後に民間検査機関が行った学校環境衛生の基準に定められた6物質のVOCの検査で異常ないことが確認されました。その後、冬休み終了後の1月半ばから新校舎の使用が開始されましたが、授業を始めて間もなく、目、鼻、喉の痛みや、頭痛・吐き気を訴える児童や教職員が出てきて、その人数が徐々に増加しました。症状の改善が思わしくなかったため、約1ヵ月後、教室を近くの地区センターに移転し、授業が開催されました。
そして再度、健康被害が発生した新校舎と避難先の地区センターの空気質を北海道立衛生研究所が調査して比較した結果、新校舎のみから厚生労働省の指針値を定めている物質以外の2種類の化学物質(1-メチル-2-ピロリドン及びテキサノール)が比較的高濃度で検出されました。また2種類の化学物質は、新校舎の教室や体育館の壁に塗られた水性塗料の成分として使用されていたことが判明しました。その後新校舎において、機械換気とベイクアウトを行うことにより、10月下旬には化学物質濃度を十分に低下させることができました。
現在、出回っているVOCは数万種とも言われています。これからも厚生労働省の指針値以外のVOCによってシックハウスが引き起こされる危険は十分に考えられます。それを防ぐには、必要換気量が確保できる換気設備で室内換気を行うしかありません。
VOC対策の基本は適切な室内換気なのです。

 

4.まとめ

「室内VOCにおける換気の関わり」としてまとめてみました。2003年(平成15年)に「シックハウス新法」と呼ばれる建築基準法の改正が行われ、シックハウス問題は少なくなりつつありますが、いまだにシックハウス問題で悩んでいる人は多くいます。また最近、厚生労働省が提示している指針値以外のVOCよるシックハウス問題が新たに生じています。このようなことから、室内のVOCによるシックハウスを防ぐ上では、0.5回/hの換気回数を有する換気設備の役割が増々重要となってきています。

 



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