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本当の換気を知る第4回 換気システム採用に当たっての注意点

換気効果、騒音対策などに優れるセントラル換気

 住宅の換気方法としては個別換気(換気扇をいくつか取り付ける方法のこと)もありますが、快適性を重視し、モーターファンの騒音、空気を排出するファンの馬力、室内デザインなどの面も考慮すれば、トイレ、廊下も含めた家全体を換気するセントラル方式が優れています。

 セントラル換気は居室などに換気口(グリル)を設置し、ダクト配管によって空気をセントラルファン1ヵ所に集め、屋外に排出します。ダクトを含むシステム全体の空気抵抗(圧力損失)を考慮した換気設計と機種選定が必要になりますが、ファンモーターは1台、熱交換型でも2台で済むので振動騒音が軽減されるほか、換気口1ヵ所当たりの換気量は一般的に36m3/h以下となり、風切り音やダクト内騒音もさほど気になりません。換気グリルはホールやユーティリティなど音の気にならないところに設置するので、騒音対策も比較的簡単です。

第1種全熱交換
新鮮なはずの給気に汚染空気が混入する危険性

 セントラル換気には大きく分けて、自然給気・機械排気式の第3種と、機械給排気式の第1種があり、第1種はほとんどが熱交換システムを装備しています。
 第1種熱交換型には重大な問題があることがわかってきています。それは換気によって捨てたはずの汚染空気に含まれる汚染物質が、新鮮給気に混じって再び室内に供給されてしまう“混入”の問題です。

 なぜこんなことが起きるかを説明するには、多少、熱交換器の仕組みを見ていかなければなりません。
熱交換器には顕熱タイプと全熱タイプがあります。顕熱タイプは温度だけを熱交換するもの。一方、全熱タイプは熱のほかに排気側(汚れた空気)に含まれた水蒸気までも新鮮空気に受け渡すもので、エネルギー交換効率は顕熱型より優れており、国産の住宅用熱交換器の多くがこのタイプです。

 まず、第1種に限らず、すべての換気ユニットに共通する特徴として、器内および器外での空気の漏れ=リークがあります。第1種の場合、これが15%以下といわれ、漏れた空気の一部(5%程度といわれている)が、新鮮空気に混入して室内に再供給されてしまいます。機械である以上、漏れなどの現象はある意味でやむを得ないもので、建築基準法でもその分を見越して換気量を増やせばよいとしています。

“汚染空気の混合”に国交省も注意を促す

本当の問題は、全熱タイプで発生する可能性がある熱交換器内での汚染空気と新鮮空気の“混合”です。
 顕熱タイプは車のラジエータのように金属、または樹脂のフィン(素子)を介して熱を汚染空気から新鮮外気に伝えるもので、リークは多少あるものの、空気の混合はほとんどない仕組みになっています。
 一方、全熱タイプは排気(汚れた空気)に含まれた水蒸気なども受け渡す紙状の熱交換素子などを使っているため、水蒸気と同じかそれより小さい化学物質などは、新鮮空気に混入(透過)してしまう危険性があります。そしてその混入(透過)率は熱交換率とほぼ同じと言われています。つまり汚染物質の5割程度が新鮮空気に混入する危険性がある仕組みなのです。

 日本では、通称・シックハウス新法の制定過程で、ホルムアルデヒドなどの有害物質濃度が熱交換換気によってどれくらい低減できるかを測定したところ、その結果があまりにも悪く、原因調査で給気と排気の混入(透過)が主な原因とわかったそうです。
国土交通省は全熱交換器内部での汚染空気の混入問題について、『木造住宅のシックハウス対策マニュアル』の中で次のようにはっきり指摘しています。
全熱交換型は『環気(排気)の一部が給気に混入するというデメリットもあります。』(そのまま『 』で引用)。

評価
第1種を使うなら顕熱型

 日本輸入換気システム連盟では、熱交換換気を採用する場合は顕熱タイプを採用することをおすすめします。
このほか、熱交換タイプは①熱交換素子などの空気抵抗が大きいため、消費電力が大きくなる、②熱交換による省エネ効果を下げないためには、住宅の隙間換気の影響を極力低減できる高い気密性能が必要(C値で0.5以下)、③トイレ、浴室からの排気も熱交換しないと住宅全体での熱回収効率は大きく低下、④これらがすべてうまくいっても、期待する省エネ効果は厳寒地の北海道・旭川などで回収に20数年、本州以南では残念ながら効果なし―となります。またフィルターの目詰まりは、即・換気不足につながるので、十分に注意が必要です。どのくらいでフィルターが目詰まりするかは製品により異なります。

第3種(排気型)は簡単で確実な現時点で最良の方法

 これらの問題を考えると、汚染空気を確実に排気し、室内にクリーンな空気を導入するためには、第3種セントラル換気が最良の選択ということになります。

 第3種は給気を直接屋外から室内に取り入れるため、給気経路での空気汚染の心配がほとんどないほか、排気はすべてファンで集めて排出するので、給気に混入する心配がありません。また、配管は排気側だけで済むのでシンプルで安定した換気を行えます。